超常現象情報研究センター

高梨純一「ノールウェイに降下した円盤」(宇宙機第4号P8,9-12)

  表記、仮名遣い等は可能な限り原文を踏襲しております。言葉遣いの間違いと思われるところも、あえて残してあります。

 空飛ぶ円盤が地上スレスレにまで降下して来たのが目撃されたという事例は、すでにいくつも現れているが  同様の事例は昨年の十一月二十三日、雪に埋れたノールウェイの小村トーポ(torpo)でも起った。
 当日の午后三時二十分頃、数軒の農家と一軒の売店、それに小さな学校の建物が、全村のすべてとも言っていい位の、地図にも見当らないほどの小村トーポの1農家では、主婦のジゼル・ストアダル夫人(Mrs,SidselSto, redal)が、台所の床をゴシゴシすり磨きながら、十才になるアンネ(Amme)と九才のトーラ(Tora )が学校から戻って来るのを待っていた。
 アンネとトーラは、彼女と夫のアスル・ストアダル(Asle Storedal )との間に出来た十人の子供の中の二人で、平素から嘘などついたことのない、素直な子供達であった。
 所が、やがてあわただしい物音を立てて駆け戻って来た二人の少女は、誠に世にも奇怪な物語を母親に物語ったのであった。
 勿論、子供達のことではあり、その上二人とも極端におびえ切っていたので、その物語は初めの中は頗るトリトメのないものであったが、よくよく問いたゝしている中に 、その出来事は、次のようなものであることがわかって来た。―
 学校が終った後、アンナとトーラは、同じく近所に住むトーラ・モイ・ホウゴ(Tora Moy Haugo) (以下トーラ・モイと略す)という九才の女の子と三人連れ立って 、森に近い傾斜面を通って、丘の中腹にある自分達の家へと急いでいた。
 三人は、少しずつ間をおいて、バラバラに一列になって歩いていたが、その三人が丁度六万ボルトと二万ボルトの高圧線が、約十ヤード(約九米 )の間隔をおいて、平行に傾斜面を横切っているあたりにさしかかった時、先頭に立って歩いていたトーラとトーラ・モイが、ふと遥か上空に黒い点のようなものが飛んでいるのに気がついた。
 と見る間に、それは次第に近ずき、大きくなって、何らかの種類の飛行物であることが明らかになって来た。
 二人が唖然として眺めている間に、その飛行体はぐんくく下降して来て 、森の樹木の頂上あたりまで近ずくと、突然ひょいとそのかげに見えなくなってしまった。だが、次の瞬間、そのあたりの森の木の頂上から一塊の 雪が滑り落ちて来て、謎の飛行体がまだ森の彼方へ飛び去ったのではなくて、そのあたりに潜み隠れていることを明らかにした。
 そこで、ひどく好奇心をかきたてられた少女達は、あわてて丘を駆け上って、高い所から森の上に隠れている飛行体の姿を眺めようとした。
 所が、二人が駆け出すか駆け出さないかに、森の木のかげに隠れて見えなかった謎の飛行体が、突然姿を現わし、進路にあった六万ボルトの高圧線をヒョイととびこえて 、トーラの頭上目掛けて 、舞い降りて来た。驚いたトーラが、あっとおびえて立ちすくんだ刹那、もうその飛行体は、トーラの頭上三、四呎の所まで迫っていた。
 その飛行体は、後にトーラ・モイが語った所によると、上半分が透明で、下半分が、全く黒くはないが、兎も角黒っぽい色をした直径十呎(約三米)ばかりの球体で、その黒い部分の周囲には、或はガラスで出来ているのかと思われるいくつもの黄い部分と、赤い小さなギザギザが沢山に認められたという。
 所が、次の瞬間、トーラは全く透明とばかり思っていた飛行体の上部に 、一つの人影を認めて、 ぎくっとしてとび上った 。トーラは、初めその部分が全く見通しで、背後の森の樹まですっかり見えるように思ったのだが 、次の瞬間、そこにうづくまっている人物を認めたのである。
 その奇妙な人物は、黒いジャケツに黒いズボンを履き、赤い大きな眼鏡を掛けて、操縦桿を握って、操縦席にうづくまっている様子であったが、 トーラが気がついた時には、盛んにいろいろな操縦ボタンを入れたり切ったりしている所のようであった。たゝ、腰から下は、飛行体の下部に隠れて見えなかった。
 次の刹那、その人物は静かに頭を動かして、二人の方を眺めた。……
 それから以後、どういうことが起ったのか、恐怖の余り、二人とも余りハッキリしたことを覚えていない。兎も角、トーラは、その後その不思議な飛行体が、トーラ・モイの立っている所に近ずき、ついで近くの灌木の上方へ上昇しかけたが、進路にあった二万ボルトの高圧線とぶつかって、豪凄しい火花を散らしたことだけを、覚えている 。次の瞬間、トーラは無我夢中で一目散に駆け出していた。
 一方、トーラ・モイの方も、謎の飛行体が高圧線にぶつかって、激しい火花を散らした刹那、一目散に駆け出していた。
 たヾ今一人の少女、十才になるアンネだけは、余程後からついて来たものか、余り大したことを記憶していない。だが、彼女も、何か飛行音のようなものが聞えたので、顔を上げてみると、何やら不思議な飛行体がトーラ・モイの頭上を離れて上昇するのが眺められ、次の瞬間、これ又激しい火花が散るのを目撃したという。
 それから数分後、アンネとトーラの父親であるアスル・ストアダルが前方に姿を現わした時には 、三人の少女は、もう無我夢中で駆けていたという。だが、その時にはもう謎の飛行体の姿はどこにも認められなかったという。……
 こういう出来事である。だが、この出来事が夢や幻の出来事ではなかった証拠には、この出来事 の直後に、村人達が現場に駆けつけた時には、謎の飛行体が二万ボルトの高圧線に衝突して落下したと思われる点から始って、約二十五ヤードに及ぶ線状の痕跡が残っているのが認められたという 。これは近くの陸軍野営地から駆けつけた一中尉によって写真に撮って保存されているという。
 この痕跡から考えると 、飛行体は高圧線にぶつかって、一時機のバランスを失い、一度雪の中に落下して、約二十五ヤードばかりそのまゝ前進した後、高空に飛び去ったもののように思われる。
 それにもう一つ、トーラ・モイが家に駆け戻った後に口にしたという、次のような謎の言葉が傅られている。
 「お家へついた時、私には焼けたソーセージのような臭いがしたわ…」  これはどういう意味なのであろうか?これは今日も尚、謎の証言として残っているそうであるが 、私は、これは謎の飛行体が高圧線にぶつかった際、その一部がこげ、その臭いが鼻について戻ったのではないか、と思う 。つまり、臭いはその時に嗅いだのだが、その瞬間の恐怖のために、それが抑圧されて家へ戻り、ほっと一息ついたトタンに、アリアリと嗅覚によみがえって来たのではないか、と思うわけである
 そう考えれば、この二つの証拠から、兎も角この出来事自体だけは事実で、つまり、何等かの見られぬ飛行体が、突然大空から降下して来て、学校帰りの三人の少女を驚かし、その後上昇しようとして高圧線にぶつかって、激しい火花を散らし 、その為バランスを失って、一旦雪の中に落下した後、二十五ヤードばかりそのまゝで前進して、又高空に飛び去ったこと だけは、証拠立てられたことになるのではないかと思う。
 その上、当の少女達の母親達は、三人の少女達が当日あわただしく駆け戻った時の、全く只事ではない恐怖の有様をアリアリと覚えている。更に 、トーラとトーラ・モイは、謎の飛行体が頭上近く迫って、その搭乗者がヒョイと首を動かして自分達を眺めた際の、言葉には言い現わせぬ不気味な印象を、その後幾度も思い出しては、激しい恐怖に戦いていたという。
 こうした事柄から考えると、当日少女達が体験したと証言する不思議な出来事が、本当に起ったのだということは、信じてもよさそうである。
 だが問題はその解釈である。果してこの出来事が、本当の円盤の降下例として考えることが出来るのであろうか?
 私に言わせれば、残念ながら、この出来事はヘリコプターである可能性が余りに強いと言わなければならない。
 だが、実はこの出来事を米誌「サー!」(Sir!)(扇情的な実話本位の三流誌)の依頼に応じて同誌本年八月号に寄稿したノールウェイの一流新聞記者(と言っても、サー誌がそう言っているだけなので、本当のことかどうかは知らない。)オッ ドバール・J・ラーセン(Oddvar J. Larsen )も、初めはやはりこの出来事をヘリコプターの事故だろう位に考えて、全く問題にしなかったという。所が、その後、最初にこの出来事をラーセンに傅えてくれた人が、わざわざテープレコーダーを現地に持ち込んで、三人の少女を初め現地関係者全員を一人一人克明に訪問し、更に事件の現場に機械を運んで現地の状況を詳細に描写録音したものを贈ってくれたので、それに幾度も幾度も耳を傾けるに及んで、この出来事がやはり本当の円盤の降下例であったことを確信させられたという。
 だが、この出来事が本当の出来事であったという感銘と、この謎の飛行体が本当の円盤であったという結論とをゴッチャにしているようで、そんなことを言いながら、彼はこの飛行体がヘリコプターではなかったという証拠を何一つあげていない。それどころか、遂に 、少女の一人が(トーラ)、その録音の中で、こう証言していることまで、明らかにしているのである。――
 「その“石”(少女達はこの飛行体を「円い石のようなもの」と表現している。)が私の方に向って降りて来た時には、 白い尾を持っていました。だけど、それが上昇する時には、今度はその尾の方から上昇しました 。何てこれはおかしなことでしょう。と私は思いました。……」
 これを読まれた読者は、多分よくニュース映画などで、小型のヘリコプターが地面近く(又は海面近く)まで下降して来て、又上昇する際の光景を思い出されるのではないかと思う。そういった際、ヘリコプターは尾の方から上昇するように思える場合が多々あるように思うのであるが、どうであろうか?
 だが、もしこの解釈が正しかったとしたら、この少女達はヘリコプターを知らなかったのであろうか?又、ヘリコプターなら、当然その上部に回転している筈の大きなプロペラと、下部につき出している筈の車輪とは、どうして少女達の注意をひかなかったのであろうか? だが、これらの点も、こういう辺鄙な土地の少女としては、ヘリコプターというものがあることは知っていても、こういう型の実物は目にしたことがなかったのかも知れないし、又怪しい飛行体が頭上まで降下して来た恐怖におびやかされて、プロペラや車輪にまで注意が行き届かなかったことも、あり得ないことではない、と思えるのである
 では、何故ヘリコプターがこんな奇怪な行動を取ったのであろうか? ――実は、それだけが謎である……と言いたいのだが、実はその点も、次のように解釈すれば充分にツジツマが合うことで 、この点からも、あながち空飛ぶ円盤を引合いに出す必要はなさそうに思われるのである。
 つまり、当日どういう目的でか、その近くの高空を飛んでいた一人乗りのヘリコプターが、学校 帰りらしい三人の少女を認めてフト悪戯気分を起 し、下降して来て少女達をビックリさせようとした処、少女達の驚きようが余りにも激しかったので、思わず狼狽して急遽上昇しようとした刹那、行手にあった高圧線にぶつかって落下しその勢いでそ の儘暫く雪の上を車輪を引ずって(又は機体の后部を引ずり)前進し、上昇したと考える事である。但しこの解釈にムリがないかどうかヘリコプターの専門家に伺ってみたいと思う。兎も角私は、直径が三米位で上半分が硝子の掩蓋に覆われ、白 い尻尾を持った円盤の目撃例にはまだお目にかゝった事がないし、搭乗者の描写も余りにも人間臭いため、一寸この目撃例を 信じかねる訳である。
 こんな訳で私はこの出来事を本当の空飛ぶ円盤の目撃例として承認するのには頗る躊躇する訳で あるが、最近入手した最も新しいニュースであるので、こゝで我が国円盤研究家の皆様のために御紹介しておく訳である。私の懐疑論に対する読者のご感想を伺いたい。
 尚、その記事によるとこの出来事の少し前位にノールウェイでは、野原 に花を摘みに行った姉妹が地上に墜落した空飛ぶ円盤らしいものを目撃し、その搭乗者らしい人物に話しかけようとして、うまくいかなかったという実例があるようであるが、これは又いずれ詳しい資料を発見したら、ご紹介したいと思う。

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