一般社団法人潜在科学研究所 The Potential Science Institute

第12号 オーパーツ:ヘッジスの水晶ドクロ@ 

  水晶頭蓋骨(クリスタル・スカル)と呼ばれるものがあります。
 平たく言ってしまえば、水晶を彫って作られた、人間の頭蓋骨を模した彫刻ということです(そのままです)。
 その手の出版物ではけっこう昔から、いわゆるオーパーツの一種として紹介されることが多かったのですが、2008年に公開された『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』のおかげで、この物品も一躍メジャーになったようです。
 もっともオーパーツとは本来、その物品が属する時代の技術では制作不可能とされるものですから、水晶頭蓋骨がこれに該当するかどうかは疑問です。
 水晶の加工はかなり古代から行われており、日本でも縄文時代から行われていたようです。人間の頭蓋骨のような複雑な形も、時間さえかければ、砂と手で磨くという古代のやり方でもまったく不可能というわけではありません。
 じつは、この種の水晶頭蓋骨というものはいくつもあり、一応古代文明に由来するとの能書きを持つものだけでも20個以上確認されています。
 しかし、これら数ある水晶頭蓋骨の中でも、もっとも有名なのがアンナ・ミッチェル=ヘッジス(1907〜2007)が所有していたもので、これは特別に「宿命の頭蓋骨」とも呼ばれています。あるいは持ち主の名を取って「ミッチェル=ヘッジスの頭蓋骨」とか、稀には「愛の頭蓋骨」と呼ばれることもあるようです。  この「宿命の頭蓋骨」には、いろいろな伝説がまとわりついています。
 まずその発見について、非常に謎めいたお話が伝わっています。  じつは、持ち主であったアンナ・ミッチェル=ヘッジスの養父フレデリック・アルバート・ミッチェル=ヘッジス(1882〜1959)は、けっこう有名な探検家で、各地を渡り歩いて新しい動物やら古代遺跡やらをいくつか発見した人物です。
 このフレデリックが1924年、ブリティッシュ・ホンデュラス(現在のベリーズ)奥地ルバントゥンで、自分が発見したマヤ遺跡の発掘を行っていたときです。フレデリックの養女アンナもこの発掘に同行しておりました。
 このとき養女アンナが遺跡を散策中寺院の祭壇の下に半分埋もれて何か光るものを見つけました。数日後、ちょうどアンナの17歳の誕生日に掘り出されたのが、問題の頭蓋骨だったのです。
 もっともこのときは取り外し式の下顎はなく、こちらは後日近くで見つかったそうです。
 アンナによれば、父フレデリックは、マヤの貴重な遺産であるこの頭蓋骨を一旦マヤ人に返したそうですが、1927年の発掘終了時にマヤの僧侶がやってきて一家にこれを託したということです。
 ところが、このアンナが語る発見譚には、以前から疑問が持たれていました。
 まずは、アンナがベリーズに入国していたかどうか非常に疑わしいのです。  実際、ルバントゥン遺跡で発掘中の一行は何枚も写真を残していますが、養女アンナが写ったものは一枚もないのです。
 さらに、フレデリックと一緒に発掘を行ったトーマス・ガン博士が1931年に著した『マヤの歴史』という著書には、水晶頭蓋骨への言及はありません。
 アンナ本人の証言以外でこの水晶頭蓋骨の歴史をたどってみると、最初に出現したのは1934年のことで、そのときはロンドンの美術商シドニー・バーニーの所有物でした。
 バーニー自身は、彼がどこからこれを手に入れたのか語っておりませんが、1936年の人類学雑誌『マン』は、これを所有者にちなんで「バーニーの頭蓋骨」と呼んでおります。
 この雑誌では、エイドリアン・ディグビーが大英博物館にある水晶頭蓋骨との比較を行っております。
 じつは大英博物館にも、別の水晶頭蓋骨が展示されているのです。  大英博物館は、1856年にも3.8cmの小さな水晶頭蓋骨を購入しておりますが、「宿命の頭蓋骨」と比較されたのは1886年にティファニー経由で購入したものです。
 これは当初、アステカの遺品として展示されていたのですが、その後の調査で宝石加工器具を使用した痕跡が見つかり、近代の作品と判明しました。現在はその旨注釈を付けた上で展示されております。
 大きさを比べてみると、大英博物館のものは長さ17.7センチ、幅13.5センチ。これに対し、「宿命の頭蓋骨」は長さ17.4センチ、幅14センチ。しかも全体のプロポーションもよく似ています。
 そこでディグビーは、「宿命の頭蓋骨」は、この大英博物館のものをモデルに作られたのではないかという可能性を指摘しています。ただし、「宿命の頭蓋骨」は顎が取り外し式になっているのですが、大英博物館のものは下あごも一体成形されています。
 ともあれ、公式の記録では、フレデリックは1943年にサザビーの競売でバーニーから400ポンドでこの頭蓋骨を競り落としています。アンナ本人もこの事実を否定しておらず、フレデリックが国外にいるとき、頭蓋骨をシドニー・バーニーに託していたところ何らかの理由でオークションに出されたため、仕方なく落札したと述べております。

今回の参考:皆神龍太郎「クリスタル・スカルの真実」(彩図社『謎解き古代文明』所蔵)
        Fortean Times第237号

                     主任研究員・羽仁礼記(2011年9月1日配信)


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