一般社団法人潜在科学研究所 The Potential Science Institute

第13号 オーパーツ:ヘッジスの水晶ドクロA

 

 「宿命の頭蓋骨」にまつわる伝説は、その後もますます増殖していきました。
 フレデリック・ミッチェル=ヘッジスが、初めて「宿命の頭蓋骨」に言及したのは、1954年の『我が同胞の危機』という自伝でした。
 フレデリックは、1930年代にいくつもの記事を書いたり、ラジオ番組を持っていたりしたのですが、1954年までこの頭蓋骨に言及していないのです。これも奇妙なことですが、ともあれ、この著書の中でフレデリックは、この頭蓋骨はマヤ文明の遺品であり、作られてから少なくとも3600年は経ており、マヤの僧侶が秘教的儀式に用いたもので、頭蓋骨の力で人を殺すこともでき、すべての悪の実現であったなどと記しています。それをあざ笑ったものが死んだり病気になったりしたなどとも書いています。
 その後、本来テンプル騎士団の所有であったものをフレデリックがベリーズに持ち込んだとか、1913年にメキシコで消えたビアースなるジャーナリストとフレデリック・ミッチェル=ヘッジスは、メキシコ革命の英雄パンチョ・ビリャの軍隊で戦っていたことがあり、そのとき2人で「宿命の頭蓋骨」を盗んだなどという話も生まれたようです。
 さらに、人によっては頭蓋骨を見つめると筋肉が緊張したり脈拍が速くなったり喉が乾いたりするとか、目から青い光を放っており、コンピューターのハード・ディスク・ドライブを壊してしまうとかいう話や、この頭蓋骨とチャネリングを行って未来の予言を得たとする人まで現れました。さらにさらに、2012年伝説の中で、顎を外すことのできる頭蓋骨は全部で13あり、マヤの暦が終了する2012年12月21日までに集めないと世界が滅亡するという噂も生まれました。
 この過程それ自体を時系列的に並べると、この種の神話がどのようにエスカレートしていくかを考察する上で、非常に興味深い実例になるかもしれません。
 しかも、この頭蓋骨については、過去ヒューレット・パッカード社や大英博物館が調査を行ったのですが、大英博物館の頭蓋骨と違って、現代の器具を使用した痕跡がみつからなかったのです。
 ところが2008年になって、アメリカのスミソニアン自然科学博物館の人類学者ジェイン・マクラーレン・ウォルシュがあらためて行った調査により、ついに現代の高速加工機器の痕跡が発見されたということです。
 最初にスミソニアン自然科学博物館にこの頭蓋骨を持ち込んだのは、アンナ・ミッチェル=ヘッジスの寡夫ビル・ホーマンで、2007年11月のことでした。
 じつはスミソニアン博物館にも、これまた別の水晶頭蓋骨が保管されていたのです。  これは1992年、匿名の人物から博物館に送られたもので、高さ25cm、重さ14Kgで、少し濁った水晶を削ったものです。同封された手紙には、これはアステカの遺品で、かつてのメキシコ大統領ポルフィリオ・ディアスが所有していたと書かれていました。
 この頭蓋骨の調査を行ったのも、今回登場するジェイン・マクラーレン・ウォルシュでした。彼女は、以前大英博物館の水晶頭蓋骨を見たことがあり、さらにこの頭蓋骨の前にも、スミソニアン博物館で偽の水晶頭蓋骨が展示されていたことを覚えていました。
 ともあれ、これが本物であるなら博物館にとって貴重な財産になります。そこで、ウォルシュは各国の専門家と、古代中南米の宝石加工技術について研究しました。
 そして1996年、大英博物館の材料専門家マーガレット・サックスの協力でこの頭蓋骨を調べたところ、現代の機材を使用した痕跡が見つかったということです。
 その同じウォルシュが、今回宿命の頭蓋骨を調査したわけです。
 本格的な調査は2008年になって始まりました。やり方は、まずシリコンで頭蓋骨の精密な型取りをし、そのシリコンの方を電子顕微鏡で調べるというやり方です。この方法で調べた結果、近代の器具を使用した痕跡が見つかったということです。  ウォルシュもまた、「宿命の頭蓋骨」が、大英博物館の模倣・発展型であると推定しています。とすると、それが作成されたのは大英博物館が展示を始めた後、おそらくは20世紀になってからでしょう。現代の器具を使えばそう時間はかかりませんから、おそらく最初に現れた1934年の直前に作られたものと推定しています。
 ウォルシュは、アンナ・ミッチェル=ヘッジスの書簡も調べ、「宿命の頭蓋骨」に関する伝説が生まれた経緯も推定しています。
 アンナの父フレデリックは、カリフォルニアの物品商フランク・ドーランドとつきあいがあり、このドーランドとはアンナも文通していたのです。ドーランドは1963年に、水晶頭蓋骨を大々的に売り出そうという提案を行っており、ウォルシュは、アンナがベリーズで「宿命の頭蓋骨」を発見したという物語はこの過程で生み出されたのではないか、と推定しています。その見返りとしてアンナが得られるものは、「宿命の頭蓋骨」はマヤの真正の遺品だという評価と、その所有者であるという名誉でした。実際アンナ・ミッチェル=ヘッジスの名は、限られた分野においてではありますが、今や世界中に広まっております。

今回の参考: http://www.archaeology.org/online/features/mitchell_hedges/

                     主任研究員・羽仁礼記(2011年10月1日配信)


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