一般社団法人潜在科学研究所 The Potential Science Institute

第32号 予言者アウンバラマ

  ブラジルの予言者ジュセリーノ・ダ・ルースについては、本メルマガ第27号でも取り上げましたが、正直言いまして彼の場合、事件が起きた後で、さも事前に予言していたような手紙を書いて、日付をごまかしていたと結論せざるを得ません。
 ところが、既に大正時代の日本で、これとそっくり同じようなことをやっていた偽予言者がいたということです。その人物の名は西田香峰。法名アウンバラマだそうです。
 藤田西湖『最後の忍者どろんろん』によりますと、何か大きな事件が起きたとき、アウンバラマこと西田は、何年か前の某月某日の日記を持ってこいと信者に命じます。そして問題のページを開くと、しっかり事件が予言されているというのです。
 自称甲賀流忍者第14代目にして、当時日日新聞(現在の毎日新聞)にも務めていた藤田西湖氏が得意の忍術で屋敷に忍び込み、そのからくりを暴いたのですが、その結果は・・・・はい、皆様ご期待のとおり、毎日書く日記の最後に余白を残しておき、事件が起きてから予言を書き加えていたのです。アウンバラマの巧妙な(?)ところは、毎日10時頃まで寝ていることにして誰も部屋に近づけないでおき、起き出してくるといきなり、古い日記を持ってこいと信者に命じるところにありました。じつは、こっそり朝早く起き出して朝刊を読み、予言を書き加えてから10時頃まで寝たふり(あるいは二度寝)をしていたのです。
 藤田氏にあれこれ書き立てられ、さらに詐欺の疑いで逮捕されて、その後の西田の消息は知れません。
 が、じつはここで一つ問題があります。というのは、このアウンバラマ事件、藤田西湖の著作以外では今のところ確認がとれないのです。藤田氏が捜査に乗り出したのは大正8年頃とのことですが、国立国会図書館に所蔵される当時の新聞は、朝日新聞縮刷版の復刻版のみで、日日新聞はありません。そして、少なくとも朝日新聞を見る限りこの事件について確認できませんでした。ただし、『最後の忍者どろんろん』は1958年の『どろんろん:最後の忍者』(日本週報社)の復刊で、この最初の出版のときからアウンバラマ事件については載ってますから、この種の偽予言の手法が少なくともこの時代から(おそらくはずっと前から)一部で知られていたことは確かでしょう。
 ちなみに、藤田氏の著書には他にも忍者らしい勇ましい話がたくさんあるのですが、そのほとんどが他の出版物では確認できません。他方、武術関係の文献を生涯蒐集したことは事実で、その蔵書は小田原市立図書館に西田西湖文庫として保管されています。目録を見ると、なぜかジョン・キールの『ジャドー』とか占い関係も数多く含まれ、今となっては希少なものもけっこうあるようです。
 また、草創期の陸軍中野学校で教えたというのも事実らしく、当時のカリキュラムにはしっかり忍術が入っていたとのことです。  

今回の参考:藤田西湖『最後の忍者どろんろん』新風社
      2012年6月18日付読売新聞
      小田原市立図書館HP

                                 主任研究員羽仁礼記(2013年4月20日配信)

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