一般社団法人潜在科学研究所 The Potential Science Institute

第33号 魂の重さを量った医師(1)

   20世紀初め、瀕死の重病人を秤に乗せ、死の瞬間の重量の変化を計測したというアメリカの医者がいます。それが、マサチューセッツ州ハーヴァーヒルの市営病院に勤めていたダンカン・マクドゥーガルです。
 この実験は、その手の出版物でしばしば言及されており、いつの間にか「ウィキペディア」日本語版にもページができてました。一般には「魂の重さを計測し、その重量は21グラムだった」ということで言及されるようです。たとえばリチャード・ワイズマンの『超常現象の科学』(文藝春秋)では、次のように紹介されています。

 「アメリカの医師ダンカン・マクドゥーガルも同じくらい不気味な実験で人間の魂の重さを測り、有名になった。彼は住まいの近くにある肺病患者のホスピスで、死期が迫った患者六人(中略)に注目した。患者に死の気配が感じられるたびに、マクドゥーガルはそのベッドを産業用の大きな台秤の上に移動させ、息を引き取る瞬間を待った。・・・・マクドゥーガルはこの六人について死の瞬間に減少した体重の平均値を計算し、人間の魂の重さは二十一グラムであると胸を張って発表した。」(P64,65)

 本メルマガの読者なら先刻ご承知のとおり、ワイズマンはイギリスにあるハーフォードシャー大学の心理学教授で、著書も多数ある人気のスケプティックです。疑似科学には舌鋒鋭く、またシニカルなユーモアを交えた批判を寄せており、本書のマクドゥーガル医師に関する記述も否定的なものではあります。それに、瀕死の病人を秤に乗せて死の瞬間の体重の変化を量るという行動だけ聞くと、かなり「マッド」な印象を受けます。
 マクドゥーガル医師の論文は当時、アメリカ心霊研究協会の会報と、医学誌「アメリカン・メディシン」の双方に掲載され、今でもネットで読むことができます。そしてこの論文を読む限り、マクドゥーガルの姿勢は、ワイズマンの記述から受けるものと相当異なっております。
 なお、マクドゥーガル医師の論文には、実験の日時は書いてありません。しかし、アメリカ心霊研究協会会報には、同医師が当時のアメリカ心霊研究協会事務局長リチャード・ホジソンとの間で交わした往復書簡も一緒に掲載されています。1901年11月10日付の手紙で、マクドゥーガル医師は最初の実験を1901年4月10日に行ったと書き、同じ書簡には追伸として2回目の実験についても触れています。さらに翌1902年5月22日の手紙で、前回の手紙(1902年1月6日付)の後4回の実験を行ったと書いております。このことから、第1回の実験は1901年4月10日、2回目がそれ以降11月10日までの間、そして他の4回は、1902年1月6日から5月22日の間に行われたと推定されます。 なお、同じくこの題材を扱ったレン・フィッシャーの『魂の重さの量り方』(新潮社)には、リチャード・ホジソンを「医学博士」と訳してますが、残念ながら彼は法学博士で、医学博士ではありません。訳者の調査不足でしょう。
 それから、マクドゥーガル医師が用いた秤を、ワイズマンの著書では「台秤」とありますが、実際には天秤式で重量を量るフェアバンクス社の製品ということで、フィッシャーの著書には同社の秤の写真が載っており、マクドゥーガルはこれに似た秤を用いたというキャプションがあります。  

今回の参考:リチャード・ワイズマン『超常現象の科学』文藝春秋
      レン・フィッシャー『魂の重さの量り方』新潮社
http://ja.scribd.com/doc/20281719/21-Grams-Hypothesis-Concerning-Soul-Substance-Together-with-Experimental-Evidence-of-The-Existence-of-Such-Substance http://www.ghostweb.com/soul.html

                                 主任研究員羽仁礼記(2013年5月10日配信)

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