一般社団法人潜在科学研究所 The Potential Science Institute

第41号 ナチスとUFOB

  最近のナチスUFO神話体系の中で、注目を浴びているのが「ヴリル協会」なるものです。
 「ヴリル」とは、イギリスの作家エドワード・ブルワー=リットンが1871年に著した小説、『来るべき種族(The Coming Race)』に登場する特殊なエネルギーのことです。そして「ヴリル協会」なるものが最初に登場するのは、1960年、フランスのジャック・ベルジェとルイ・ポーウェルが書いた『魔術師の朝』(邦訳『神秘学大全』はその抄訳)です。
 この著書によれば、「ヴリル協会」は「光明結社」とも呼ばれ、本来架空のエネルギーであるヴリルが実在するとし、その開発に努めた団体で、イギリスの魔術結社「黄金の夜明け」とも関係があったということです。そしてヒトラーのブレインの1人、カール・ハウスホーファーもメンバーだったとなっております。そこでハウスホーファーを通じてナチスとも結び付けられ、その後ナチスをオカルト団体とする関係書でたびたび言及されます。
 というわけで、ジャック・ベルジェとルイ・ポーウェルです。
 ベルジェは本来、ロシアのオデッサ生まれたユダヤ人ですが、1925年にフランスに移り化学者となります。1954年にルイ・ポーウェルと出会い、1960年に『魔術師の朝』を発表、その後は超常雑誌「プラネット」の編集に携わりました。この『魔術師の朝』には、アメリカの原子力潜水艦ノーチラス号が潜航中ESPテストを行ったとか(このような事実はないようです)、ベルジェが伝説の錬金術師フルカネッリと出会い、核エネルギーの使用について警告を受けたとか(確認できません)、さらには、古代宇宙飛行士説にまで話を広げておりますが、この著書では「ヴリル協会」とUFOとはつながっていません。
 ちなみにベルジェとポーウェルは、戦後アメリカに移住したドイツのロケット科学者ヴィリー・レイ(バグダッド電池にも関わってます)から「ヴリル協会」について聞いたとしておりますが、この話題を提供したヴィリー・レイはSF雑誌にも寄稿しており、アメリカのSF雑誌「アスタウンディング」1947年5月号では、「真実のための協会」なる団体がヴリルについて研究していると述べているようです。
 というわけで、「ヴリル協会」という正式名称を持つ団体が実在したことは確認されていません。ただし、セオ・パイジュマンが「フォーティアンタイムズ」第303号に寄稿している記事によれば、1930年、ヨハンネス・タウファーなる人物が、ベルリンで「ヴリル:宇宙の根源的力、アトランティスの再生」と題したパンフレットを発行しており、その発行元が「帝国活動協会来るべきドイツ(略称RAG)」であり、この団体が「ヴリル協会」の元ネタになったのではないかとしています。同じくパイジュマンの記事によれば、1980年代末から1990年代初頭にかけて、ウィーンにある「テンペルホフ協会」なる団体がこの「ヴリル協会」なるものを復活させ、協会の女性霊媒がアルデバランの知的生命体と接触したという情報を付け加えたようです。さらにそれがUFOと結びついたのは1992年以降ということですが、本場(?)ドイツでは、ヴリル協会とアルデバラン、そしてUFOを結びつけた著作が何冊も出ております。
 ちなみに、ヴリル協会のUFO開発というテーマを日本で最初に紹介したのは、かの矢追純一氏の『ナチスがUFOを造っていた』(1994年刊)のようです。もっとも、本書にはUFOを開発していた団体の一つとしてヴリル協会は登場しますが、アルデバランの生命体と接触していたのはハインリッヒ・ヒムラーとしています。
 このヴリル協会とSSの関係は論者によって違っており、http://www.viewzone.com/vril22.htmlによれば、ヴリル協会の「ヴリル型」と、トゥーレ協会がSSと共同で開発した「ハウネブ型」の2系統があったとしています。他方、矢追さんの著書に登場するラトホッファーなる人物は、ヴリル協会のシューマン博士がまずRFZと呼ぶシリーズを作り、RFZ-5からハウネブ(矢追さんの著書では「ハウニブー」)と名前が変わり、その後ヴリル型が作られたとしています。
 ともあれ、このハウネブ型についてはSSを開発主体とするストーリーが主体で、通常3タイプ一組の画像が出回っています。これによると、T型とU型はアダムスキー型そのものなのですが、上部が平らで、底部に戦車の砲塔のついたものもハウネブUとして紹介されることがあります。  


今回の参考:ルイ・ポーウェル、ジャック・ベルジェ『神秘学大全』サイマル出版会
       矢追純一『ナチスがUFOを造っていた』河出書房新社
        矢追純一『矢追純一のUFO大全』リヨン社
        Fortean Times No.303
        Renato Vesco, David Hatcher Childless『 Man-Mad UFOs 1944-1994』AUP   Publishers Network             http://www.viewzone.com/vril22.html        


                 主任研究員羽仁礼記(2013年11月15日配信)

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