一般社団法人潜在科学研究所 The Potential Science Institute

第51号 空飛ぶ円盤のあけぼの3

 日本のUFO研究前史について引き続き述べると、やはり円盤関係の記事が増えるのは、1955(昭和30)年頃からのようで、やはりアダムスキーの『空飛ぶ円盤実見記』が翻訳出版されたのが影響しているようです。
 再び「UFOと宇宙」197812月号のインタビューによりますと「この本を買った人や、近所で関心のある人たちが店の中に集まって、ウソかマコトかという議論が続くようになった」とのことで、アダムスキーだけでなくUFO全般について論じあおうということで「日本空飛ぶ円盤研究会」ができたとのことです。
 アダムスキーの著書については、かの埴谷雄高氏も、『近代文学』1955(昭和30)3月号で「一九五四年十大ニュース」のひとつとして触れております。もっとも、埴谷先生によればこの内容は「想像力が貧困」だそうです。同じ年の6月、つまり「日本空飛ぶ円盤研究会」結成の直前には、原田三夫氏の『世界の謎』(偕成社)が出ておりますが、この中ではアーノルド事件やマンテル事件などがかなり詳しく紹介されております。
 なお『空飛ぶ円盤実見記』を出版した高文社は、今やUFO関連書籍で有名ではありますが、本来高等文官試験(略して「高文」、現在の国家公務員採用総合職試験と司法試験を合わせたもの)の参考書や法律・経済の参考書を主体とするおカタいところです。「高文」社という名称自体この高等文官試験にちなんだ名称と聞いています。一方で軽いものも出しており、『空飛ぶ円盤実見記』については世界的なベストセラーになってましたから、日本でも売れるのではないかということで翻訳したものと思われます。この本が当たったためか、以後この出版社は『続空飛ぶ円盤実見記』(セドリック・アリンガム)、『空飛ぶ円盤は実在する』(エメ・ミシェル)など円盤シリーズを続々と刊行してUFO界での名声を高めました。もっとも、現在はUFOモノは扱っていないそうです。
 ここで、「UFO」という言葉がいつ日本に上陸したかという問題が浮上しますが、現在当法人で確認できた限りでは、北村小松氏(19011964)が『オール読物』19556月号、つまり「日本空飛ぶ円盤研究会」設立直前に掲載した「遊星よりの使者」で、すでに「UFO(未確認飛行物体)」という言葉が使われております。北村氏は戯曲、小説、エッセイなど多方面で活躍した著述家で、前回述べたように1958年頃から円盤関係の記事をいくつか執筆しており、「日本空飛ぶ円盤研究会」結成時には原田三夫氏らとともに顧問に就任しております。またもや「UFOと宇宙」のインタビューによると、北村氏は研究会の第1回会合に参加され、当時としては珍しかった海外の文献を見せてくれたということなので、こうした海外文献から「UFO」という言葉を知ったものと推定されます。この時期には、すでにプロジェクト・ブルーブックが始動しており、状況報告書も何本か出されていましたが、まだ本家アメリカでも「UFO」を冠した一般向けの書物はほとんどない時代です。一般に「UFO」という言葉が普及するのはまだ後のことですが、「日本空飛ぶ円盤研究会」の機関紙である「宇宙機」第1号でもこの言葉は登場しており、一部研究家はこの言葉を使い始めていたようです。
 最後に、田原澄(19141965)氏の活動についても触れる必要があるでしょう。田原氏本人は1953(昭和28)年より宇宙創造神の意図をとりつぐ器械として活動し始めたと主張しており、そのメッセージには優良な宇宙人が空飛ぶ円盤で地球に来ているというものもあります。もっともその内容を見ると、地球が壊滅の危機に貧しているとか、オリオン座からの邪悪な霊波だとか、木星や金星から優良宇宙人が地球人を導くために飛来しているなど、ウィリアムソンやアダムスキーの影響をうかがわせるものが含まれます。ご本人の最初の著書『幸福の道』は1960(昭和35)年出版なので、こうした宇宙創造神のメッセージもじつはアダムスキーなどの著書に影響されたと考えることもできるでしょう。ただし時代の大転換(今でいうアセンション)に宇宙人の救済を加えた円盤カルトとしては、かのCBAと並んで日本で先駆け的なものと言えるでしょう。ちなみに田原氏の運動は現在「ザ・コスモロジー」という団体が引き継いでおり、故関英男先生を通じ、船井幸雄氏や池田邦吉氏にも影響を与えています。確かに、こうした人たちの好きそうな内容です。

参考Ronald StoryThe Encyclopedia of UFOsDoubleday Dolphin
   「UFOと宇宙」197812月号
   『UFOこそわがロマン荒井欣一自分史』
   原田三夫『世界の謎』偕成社
   北村小松『空飛ぶ円盤のあけぼの』日本初期SF映像顕彰会

                 主任研究員羽仁礼記(2014年8月10日配信)

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