ナスカ紀行


 
 ナスカの地上絵を見に行ったのは2016年8月のことであった。。

 ナスカの町には一応小さな空港があるが、これは地上絵観光のための小型機専用となっていて、リマから商業便は飛んでいない。そこで朝7時リマ発の長距離バスに乗った。このバスは長距離専用の、トイレ付豪華バスで、日中は1時間に1本くらい出ている。途中、カブレラ・ストーンで知られるイカの町など何ヵ所かに乗客の昇降のため停車するが、終点のナスカまでは8時間かかる。途中車内でサーブされるのは、小さなサンドイッチとスポンジケーキのような菓子が一切れずつ、それにコップ一杯のジュースだけだった。

ナスカに着いたのは午後3時頃。この日は、近隣のカワチ遺跡やマリア・ライヘ博物館、地下水路跡など周辺の遺跡を巡るツアーに参加した。

 2日目はいよいよ、地上絵を眺める遊覧飛行だ。

 飛行時間は、空港に行って申し込むまで確定しない。その日の朝10時に空港に着いて建物に入ると、小型機を運航するさまざまな会社のカウンターがいくつも並んでいた。飛行機はどれも、4人から7人乗りの小さなセスナ機で、しかも操縦士と副操縦士が操縦席の座席ふたつを占めるから、乗客は2人から5人までしか乗れない。そしてどの機種になるかも、申し込みが終わるまでわからない。

私と家内とは、首尾よく12時発のフライトが予約でき、視察予定の12の地上絵とおおまかな飛行コースを描いた案内をもらった。予約と同時に、乗客は全員体重を量る必要がある。なにしろ小さな飛行機だから、左右の重量配分に気を配る必要もあるのだろう。


遊覧飛行のルート図

飛行機は乗客4人のタイプで、前の座席には白人の女性が二人並んで座り、私と家内は後部座席の左右に座った。

飛行機が実際に離陸したのは1235分頃で、着陸したのは1時10分だった。その間現場に往復する時間もあるから、地上絵を巡る時間は正味30分もない。その間12の地上絵の上空を飛ぶのだから、アクロバット飛行のように小刻みに旋回を繰り返すことになる。

目標の上に来ると、前方の副操縦士が飛行コース案内を示し、右や左を指さすのだが、光線の加減もあるのか、細い線で描かれた地上絵は即座には認識できない。もたもたしていると飛行機はすぐに次の目標に向かうから、カメラを窓ガラスに押し当てて副操縦士の示す方角にひたすらシャッターを切っていた。すると、なんとなく気分が悪くなってきた。

なんとかフライトが終わるまでもちこたえたが、悪いことにその日の午後、バスでリマに帰る予定にしていた。私より乗り物に弱い家内は完全にダウンしてしまい。8時間の道中ずっと苦しんでいた。

最後に、今後地上絵の遊覧飛行に参加する方のための注意事項をいくつか記しておこう。

まず、遊覧飛行は小型機で、小刻みな旋回をなんども繰り返すから、乗り物に弱い人は要注意だ。私は乗り物酔いの経験はあまりないのだが、窓に押しつけたカメラのレンズをのぞき込んだままの姿勢で旋回が続くうち、なんとなく目眩を覚えてきた。日本からはるばるやって来て遊覧飛行に参加したが、酔ってしまってそれどころではなかったという話もけっこうあるようだ。

30分弱の飛行で12のポイントを経由するからひとつの地上絵に裂ける時間は3分とない。その間に素早く地上絵を見つけて写真を撮るのもけっこう難しいし、地上絵の大きさは、身長32メートルの宇宙人から300メートルのフラミンゴまでまちまちだ。そこでちゃんとズームを調整しないと、画面の端に小さく写ったり逆に画面からはみ出したりする。とはいうものの、地上絵を確認してからカメラのズームを調整する時間などない。良い写真を撮ろうと思ったら、フライト前にもらう飛行コース案内をもとに、わずかな移動時間中にズームを調整しておく必要がある。

12の地上絵のうち、片側から見えるのは半数だけである。誰かと一緒に行って左右に座り、分担して写真を撮影した方がよい。

最後に、地上絵が目視で確認できなくても、とりあえず副操縦士のいう方角に何回かシャッターを切った方が良い。私の場合、飛行中ハチドリの絵は確認できなかったのだが、とりあえず何枚か写真を撮って後で確認すると、端の方にちゃんと写っていた。